定期販売ラボby Shopi Lab D2C・定期通販の立ち上げと、続く仕組みの作り方
D2C立ち上げ

D2C市場規模の数字をどう読むか — 出典が言えない数字は判断に使わない

「D2C市場は2025年に3兆円」という数字の出どころと、経済産業省の公式統計で確認できることを分けて整理します。参入判断に使ってよい数字の見分け方です。

D2Cへの参入や投資を検討するとき、「市場規模は◯兆円」という数字が判断材料として持ち出されます。ですが、その数字が誰の調査で、いつ、どういう方法で出されたものかを確認しないまま使うと、判断を誤ります。

よく見る「3兆円」の出どころ

D2Cの市場規模として最もよく引用される「2025年に国内市場規模が3兆円に達する」という数字は、株式会社売れるネット広告社が2020年9月9日に発表したプレスリリースが出どころです(同社サイトおよびプレスリリース配信サービスで確認、2026年9月時点)。

事実として整理すると次のようになります。

  • 発表主体:売れるネット広告社(広告代理店。市場調査機関ではありません)
  • 算出方法:同社の「過去5年の独自データおよび関連業界への調査に基づき推計」とされていますが、具体的な計算式や調査対象は公開されていません
  • 対象年:2025年(発表から5年後の予測値)。発表時点で、この予測が実際の数字で検証されたという続報は確認できていません

これは「嘘の数字」ではありません。 一民間企業が自社の知見をもとに出した予測であり、それ自体は珍しいことではありません。問題は、算出方法が非公開の1社の予測値が、出典を示さないまま「市場規模は3兆円」という確定した事実であるかのように、多数のWebメディアで再引用され続けていることです。発表から数年が経った現在も、更新されないまま流通しています。

公的統計で確認できること

「D2C市場」という区分そのものを単独で集計している公的統計は見当たりません。D2Cは物販系ECの中に、他の販売形態と混在した形で含まれるためです。確認できるのは、より広い枠であるBtoC-EC市場全体の数字です。

経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月26日公表)によると、

  • 2024年の国内BtoC-EC市場規模は 26.1兆円(前年24.8兆円、前年比5.1%増)
  • EC化率(BtoC)は 9.8%(前年比0.4ポイント増)

これらは経済産業省が毎年委託調査を行い、公表日を明記して発表している数字です。D2Cだけの数字ではありませんが、算出方法の開示があり、経年での比較ができるという点で、先の「3兆円」とは性質が異なります。

使える数字・使えない数字の見分け方

市場規模の数字を判断材料にする前に、次の3点を確認してください。

確認項目見るべきこと
発表主体公的機関・独立した調査機関か、当事者性のある一企業(広告代理店、当該市場のプレイヤーなど)か
算出方法の開示調査対象・算出式・サンプル数が示されているか。「独自調査に基づき推計」だけで終わっていないか
時点の一致いつのデータで、いつ発表されたものか。数年前の「将来予測」を現在の実態として引用していないか

3つとも満たさない数字は、社内の意思決定資料には使わないでください。 引用元として示すだけなら問題になりませんが、「市場が伸びているから投資すべき」という結論の根拠にするのは別の話です。

参入判断は、市場規模の絶対値より別の指標を見る

そもそも、市場規模の大きさそのものは、個社の参入判断にはあまり効きません。市場が3兆円でも30兆円でも、自社が獲得できる顧客数と単価が変わらなければ意味がないためです。

参入を検討する段階で見るべきは、次のような一次情報に近い指標です。

  • 自社が想定する商材カテゴリの、経産省統計でのEC化率の経年推移(伸びているか、頭打ちか)
  • 想定する検索キーワードの検索ボリュームの推移
  • 競合となりうる事業者の増減(新規参入・撤退の動き)

これらは市場規模の絶対値よりも入手に手間がかかりますが、自社の意思決定に直接効く情報です。市場規模の数字は、資料の導入部で使う分には構いませんが、それだけで参入や投資の是非を決めないでください。

商材とモデルの決め方自体はD2C立ち上げで決める順序に、定期モデルを採用すべきかの判断はD2Cはサブスクを採用すべきかに整理しています。

よくある質問

Q. 「D2C市場は2025年に3兆円」という数字は使ってはいけませんか

出典を明示したうえで「一企業の2020年時点の予測値」として引用するのであれば問題ありません。避けるべきは、出典を示さずに現在の確定した事実であるかのように使うことです。

Q. D2C市場規模の公式な統計はありますか

D2Cという区分を単独で集計した公的統計は見当たりません。確認できるのは、より広い枠であるBtoC-EC市場全体の数字(経済産業省の電子商取引に関する市場調査)です。

Q. 市場規模の数字を使わずに、参入判断はどうすればいいですか

自社の想定カテゴリのEC化率の経年推移、検索ボリュームの推移、競合の増減など、市場規模の絶対値より入手に手間がかかっても一次情報に近い指標を見てください。

Q. 経済産業省の調査はどのくらいの頻度で更新されますか

毎年度実施され、例年8月頃に前年分の結果が公表されています。数字を引用する際は、必ず公表時点と対象年を確認してください。