定期販売ラボby Shopi Lab D2C・定期通販の立ち上げと、続く仕組みの作り方
LTV・価格

LTVから逆算する定期価格の決め方 — 初回割引をどこまで出せるか

継続率から期待LTVを出し、そこからCPAの上限と初回割引の限界を決める手順。値引きを勘で決めないための計算。

「初回いくらまで下げられますか」という質問には、継続率が分からないと答えられません。逆に言うと、継続率さえ実測できていれば、出せる割引の上限は計算で出ます。

ここでは、実務で使う最小限の計算手順をまとめます。

1. 期待継続回数を出す

まず、1件の契約が平均して何回配送まで続くかを出します。回数別の継続率が分かっていれば、そのまま足し上げるのが最も正確です。

期待継続回数 = 1 + (1回目→2回目の継続率)+(1→2)×(2→3)+ …

たとえば継続率が 1→2 で 70%、2→3 で 82%、3→4 以降が 90% で安定するなら、初期の数回で 1 + 0.70 + 0.57 + 0.52 + … と積み上がっていきます。

実測がない場合は、月次解約率の逆数を暫定値として使えます。 月次解約率が10%なら期待継続は約10回。ただしこれは離脱が毎回一定という仮定に立っているので、初回に山があるモデルでは楽観的に出ます。暫定値として扱ってください。

2. 粗利ベースのLTVにする

売上ではなく粗利で計算します。定期販売は配送が毎回発生するので、送料と決済手数料を回数分引かないと数字が合いません。

1回あたり粗利 = 販売価格 − 原価 − 送料 − 決済手数料 − 同梱物・梱包費

初回だけ価格が違うので、初回と2回目以降を分けて計算します。

LTV(粗利) = 初回の粗利 + 2回目以降の1回あたり粗利 ×(期待継続回数 − 1)

初回が原価割れするのは定期販売では普通です。問題はその赤字を何回で回収するかで、それがそのまま 回収期間 になります。

3. CPAの上限を決める

LTVがそのままCPA上限ではありません。CS対応や決済リトライなどの運用コスト、そして事業として残す利益を引きます。

CPA上限 = LTV(粗利) × 目標粗利率 − 1件あたり運用コスト

「LTV = CPA」で回すと、事業としては損益ゼロで走り続けることになります。どれだけ残すかを先に決めてください。

キャッシュフローの制約を忘れない

LTVで見て黒字でも、回収に8か月かかるなら、その8か月分の広告費を先に払える資金が必要です。成長速度は、LTVではなく 回収期間と手元資金 で決まります。

月あたりの獲得件数を伸ばすほど、未回収の残高は積み上がります。ここを見ずにアクセルを踏むと、黒字のまま資金が尽きます。

4. 初回割引の上限を出す

ここまで来ると、初回にいくら出せるかが決まります。

初回に出せる原資 = CPA上限 − 実際の広告CPA

広告で1件7,000円かかっていて、CPA上限が9,000円なら、初回割引に回せるのは2,000円です。ここを超えると、獲得すればするほど赤字が増えます。

割引を深くすると継続率が下がる という関係もあるので、単純な引き算では終わりません。初回500円と初回1,980円では、集まる顧客層が違います。深い割引で集めた顧客は、期待継続回数のほうが下がるため、LTVも同時に下がります。

だから、割引率を変えるテストは CVRではなく、コホートの3か月後残存まで見て評価する 必要があります。

5. どこを動かすと効くか

同じLTVを上げるにも、レバーによって効きが違います。

レバー効き方難易度
継続率(初回→2回目)LTV全体に乗算で効く。最も効果が大きい
2回目以降の単価回数分効く。値上げは離脱リスクを伴う
同梱・クロスセルでの単価上乗せ継続率を下げずに粗利を足せる
送料・梱包費毎回発生するので回数分効く
初回割引の縮小即効性があるがCVRが落ちる

見落とされやすいのは 送料・梱包費 です。1回あたり150円下げられれば、期待継続10回で1,500円のLTV改善になります。これは初回割引を1,500円縮小するのと同じ効果を、CVRを落とさずに得ることに相当します。

まとめ

順序はこうなります。

  1. 回数別の継続率を実測する
  2. 粗利ベースでLTVを出す
  3. 目標粗利率を引いてCPA上限を決める
  4. 広告CPAとの差分が、初回割引に回せる原資
  5. 割引を変えたら、CVRではなくコホート残存で評価する

この計算が回っていないまま初回価格を下げると、売れているのに資金が減る状態になります。