みなさんは越境ECにおける「消費税環付」をご存知でしょうか。
「消費税還付」とは、海外で商品を販売する事業所が受けられる免税措置のひとつです。
日本で商品を販売する際に必ず消費税が発生するのは周知の事実。
この消費税は消費者が支払うようになっており、事業者側は10%の課税額で商品を販売します。
それに対して、海外向けに商品を販売する際は消費税が発生しません。
なぜなら、消費税とは国内での消費に対して発生する税金だからです。
海外で商品を販売する際に消費税は一切発生しませんが「国内での商品の仕入れ」「商品の発送」には、あらかじめ消費税が含まれています。
このように、すでに支払っている消費税を返還してもらうための制度が消費税還付です。
これを適切に受けられるようにすれば、余計に払った分の税金が返ってきますし、コストの削減にも繋がります。
諸経費がかさみがちな越境ECにおいて、このような制度があるのはとても嬉しいポイントです。
ただし、適当に申請をすればどなたでも免税の対象になるわけではありません。
当記事では、消費税還付を受けるための条件や注意点などを解説していきます。
海外へのビジネス展開を検討中の方はぜひ最後までご覧ください。
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そもそも越境ECの仕組みとは?
「消費税還付」を解説する前にまずは「越境EC」がどのようなものか詳しく見ていきましょう。
越境ECとは、インターネットでのショッピングサイトを使って行う、国際的な電子商取引(Electronic Commerce)のことです。基本的に日本国内へのユーザーよりも、海外の消費者を対象としたビジネス形態とされています。広い意味では、海外のECモールへ出店し、海外のユーザーへ向けて商品を販売することも越境ECの一部と言われているようです。
兼ねてより、日本製品は世界的に見て品質が高く、さらに安全であることから、海外ユーザーの人気を獲得していました。中国人観光客による爆買い現象で日本製品の人気の高さを認識なさった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここ数年は円安の影響やリピート需要の高まりにより、インターネット環境さえ整えば、手軽に商品を購入できる越境ECの人気に火がつきました。
経済産業省の調査によれば、2021年度の越境ECにおける市場規模の伸びは前年比で日本は約9%アップ。アメリカは約19%アップ。中国は11%アップとなっています。
なお、アメリカや中国だけでなく、近年はタイやインドネシア、台湾などでも越境EC需要の増加が予想されており、市場規模の拡大は間違いないといえるでしょう。
どんなときに消費税還付は受けられる?
越境ECを行う事業者は消費税還付を受けられるのは、以下のようなケースが挙げられます。
赤字の場合
売上が大きく減少した場合や法人を設立して間もない時期に売上よりも仕入れなどの経費が多かった場合、言うまでもなく消費税額はマイナスで計上されます。
この場合は問題なく、消費税還付の対象です。
ただ、経費がかさんだことを理由に赤字になった場合は例外なく還付金を受け取れるというわけではありません。
下記に消費税還付から除外される条件をまとめたので、ご確認ください。
不課税取引(※1)
・国外の取引により支払った経費
非課税取引(※2)
- 従業員に支払ったお給料
- 租税(事業税・固定資産税・不動産取得税)
- 社会保険料(国民年金・国民健康保険料)
- 損害保険料・生命保険料
課税されない支出には、注意しましょう。
高額な設備投資を行った場合
事業を始める際に必要な設備や自動車などを購入することで、一時的に売上で受け取った消費税よりも、支払った消費税の方が多くなる場合があります。この場合も消費税還付の対象です。
例えば、消費税率を10%で計算したとして、資産投資額が1000万円を超えると、100万円レベルでの還付を受け取れます。分割で購入した場合も引き渡しを受けた日が課税仕入れを行った日として認識されるため、その事業年の支払い消費税にすべて計上されるのです。
ただし、土地の購入については消費税の課税対象外であることにご注意ください。
不動産業を営む事業者は家賃収入が非課税になるので、基本的に消費税還付を受け取れません。
輸出メインの貿易業を営んでいる場合
冒頭でも解説した通り、消費税とは日本国内での取引にかかる税金です。
つまり、海外で売上が発生したときの売上金には消費税は含まれず、結果的に受け取る消費税は少なくなります。
なお、国内での仕入れや発送には消費税がかかってしまうので、支払った分の消費税がかさみ、還付金の対象になるというわけです。
簡易課税制度を適用されている事業者は国内での取引と同様に還付を受け取れないのでご注意。
(※1)不課税取引:国内において事業者が事業として対価を得て実施する資産の譲渡・資産の貸付や外国から商品を輸入する場合のような条件に当てはまらない取引のこと。国外での取引以外に寄附や贈答、賃金の支払いなどが挙げられる。
(※2)非課税取引:国内において事業者が事業として対価を得て実施する資産の譲渡・資産の貸付や外国から商品を輸入、といった消費税の課税対象になる取引であった場合でも、消費税の性格上、課税対象として馴染まない取引の総称。
消費税還付を受けるための条件とは?
先述したように、消費税還付を受けるためには諸々の条件をクリアしていなければなりません。単純に「商品の販売を行うのが海外である」ということだけではダメです。
ここからは、詳しい条件について見ていきましょう。
還付申請書類を提出すること
まずは、還付申請書類を一式揃えたうえで、課税期間の末日から2ヶ月以内に税務署へ提出します。
なお、この際に必要な還付申請書類は以下の通りです。
- 課税期間分の消費税・地方消費税の確定申告書
- 仕入控除税額に関する明細書類(法人用)
- 課税売上割合・控除対象仕入税額などの計算書
ここでご紹介した以外にも、国外に商品を発送したことを証明する書類や輸出許可書、仕入れを証明するための納品書や請求書なども必要です。
消費税還付の申請期間は課税期間末日から2ヶ月以内、個人事業所の場合は課税期間の翌年3月末まで。
上記の書類を揃えて、必ず期限内に提出するようにしましょう。
なお、還付金の受け取りには「預貯金口座への振り込み」もしくは「最寄りの郵便局やゆうちょ銀行へ行き還付金を受け取る」の2つの方法があります。
確定申告書の「還付金の受け取り場所」で指定することをお忘れなく。
消費税課税事業者であること
そして、消費税の還付を受けるには「消費税課税事業者」になる必要があります。
消費税課税事業者とは、消費税の申告・納税義務がある事業のことです。
課税事業者かどうかの基準は以下のように区分されています。
- 基準期間での判定
ここでいう「基準期間」は2期前の事業年度のことです。
基準期間内での課税売上高が1000万円を超えていた場合、課税事業者になります。
- 特定期間での判定
基準期間内での課税売上高が1000万円以下の場合は「特定期間」の課税売上高が1000万円に達しているかどうかで判断します。
特定期間とは、前年度の期首から6ヶ月の期間のことです。
なお、課税売上高の代わりにこの期間内での給与や人件費の支払い合計額でも判断できます。
越境ECで消費税還付が受けられない場合とは?
逆に消費税還付が受けられないのは「消費税免税事業者」です。
消費税免税事業者は基準期間での課税売上高が1000万円以下の法人事業者や個人事業者のこと。
また、資本金(または出資額)が1000万円未満の設立してまだ日が浅い法人事業者や個人事業者もこれに区分されます。大前提として、消費税免税事業者は輸出した商品の仕入れにかかった消費税の控除ができないので、還付は受けられません。
消費税免税事業者が還付を受けるには、先述したように消費税課税事業者になる必要があります。
消費税の還付期間について
還付金を受け取るには、申請を完了させてからおよそ2~3ヶ月半かかることを頭に入れておきましょう。なお、還付金の申請を行う際に「1年に1回受け取る」を選ぶと、振り込みまでかなりの時間を要します。
ただし、1ヶ月毎に申請を行った場合、数ヶ月遅れになることに目を瞑ればこまめに還付金を受け取ることが可能です。
多少面倒かもしれませんが、早めに還付金を受け取っておきたいという方は「1年に4回」または「1年に12回」を選んでおくのをおすすめします。このとき、e-Tax(電子申告)を利用すれば、およそ2週間程度で支給されることも覚えておいて損はありません。
越境ECで消費税還付を受ける流れ
ここからは整理の意味も兼ねて、消費税還付金を受け取るための一連の流れを順番に見ていきましょう。
必要な書類の準備
まずは、こちらの3つの書類を揃えましょう。
- 課税期間分の消費税・地方消費税の確定申告書
- 仕入控除税額に関する明細書類(法人用)
- 課税売上割合・控除対象仕入税額などの計算書
これらの書類を事業年度が終了してから、2ヶ月以内に税務署に提出してください。
なお、輸出業を営む法人の場合は輸出で受け取る還付金と国内向け事業の納税額を同じタイミングで申告する必要があります。
書類の記載方法については、国税庁の公式ホームページに掲載されている「記載要領」をご確認ください。国税庁の公式ホームページは各種書類のダウンロードもできます。
もし、自分ひとりだと不安な方は書類の作成を税理士に依頼するのも手です。
この際、すべての業務を税理士にまかせるのは避けた方が良いでしょう。
というのも、越境EC向けの税理処理に対応できる税理士はまだまだ日本国内ではほとんどいません。
基本的に税理士はクライアント側の要望に基づき、過去の判例を参考に税務処理を行いますが、越境ECというビジネス形態が浸透したのは比較的最近のことです。
過去のデータが少ないため、税理士にまかせっきりにするのではなく、事業者側が積極的に適切な処理方法についてアドバイスをもらう、という姿勢が必要になります。
税理士からは助言をもらうくらいの意味合いに抑えておいて、適切な処理を行えるようにしましょう。
還付金の申請
書類が揃ったら、事業者の住民票が所在する税務署へ提出しましょう。なお、申告書の記載内容や書類のチェックにある程度の時間がかかります。
そのため、還付金の支払いには2~3ヶ月の期間が必要になることを念頭に入れておきましょう。
「還付金がなければ事業に影響が出る…」という場合は早めに手続きするのがおすすめです。もし、支払いまでの期間を短縮したいなら、e-Tax(電子申告)で必要な書類を提出してみてください。
本来は2~3ヶ月かかるものを2週間程度にまで短縮できます。
還付金の受け取り
還付金の受け取りには、確定申告を行った際に指定した預貯金口座に振り込んでもらうか、ゆうちょ銀行(または郵便局)で直接受け取るか、の2つの中から選択可能です。
預貯金口座への振り込みを選んだ場合は原則、申告者本人もしくは納税管理人名義の口座へ還付金が振り込まれるシステムです。法人の屋号名を口座名に設定していた場合は振り込みが行われない可能性があるので、ご注意ください。
また、振り込みに使える口座は銀行や信用金庫、信用組合や労働金庫、ゆうちょ銀行に限定されます。
ネットバンクでは振り込みが行えない可能性があるので、事前に確認しておきましょう。
なお、還付金を受け取った場合の経理処理は消費税を収益として認識しない「税抜経理方式」と消費税を収益として認識する「税込経理方式」のどちらかで実施されます。
税抜経理方式は確定申告時に課税売上についての消費税が「仮受消費税」。課税仕入れについての消費税は「仮払消費税」として表示されます。
このとき、端数処理が発生することで、仮受消費税と仮払消費税の差額が一致しないという現象が起こりがちです。
その場合「雑収入」の項目を上手く利用することで、差額を調整するようにしましょう。
税込経理方式は「未消費税」として確定申告時に計上され、基本的に端数による金額の不一致は起こりません。
越境ECの消費税還付における注意点
それでは、最後に越境ECの消費税還付における注意点を見ていきましょう。
適切に還付金を受け取るためにも、必ずご覧ください。
各種書類は無くさず保管
消費税還付には輸出証明書や請求書、納品書や領収書など、保管しておくべき書類がいくつもあります。
これらの書類の中には、期限を過ぎてしまうと再度入手できなくなるものがあるので、無くさないように大切に持っておきましょう。
還付金が支払われるまで時間がかかる
当記事内でも何度か触れましたが、還付の申請を完了させてから、実際に振り込まれるまで2~3ヶ月程度かかります。
越境ECを展開する方にとって、消費税還付は大きな収入源のひとつです。
できるだけ早めに書類を揃えて、申請するようにしましょう。
まとめ:越境ECでは消費税はかからない?消費税還付の必要条件について
越境ECを展開する際に消費税の還付を受けられるよう準備しておくことは、重要な業務のひとつです。
今回ご紹介した消費税還付は課税事業者であれば、どなたでも対象となる可能性があります。状況によっては対象外となるケースがあるものの、いつどのようなときでも還付金の申請が行えるよう、準備しておくのがおすすめです。
最初は越境ECにかかったコストを取り戻すことに対して、あまり効果を実感できないかもしれません。
しかし、事業が大きくなっていくにつれて、消費税還付の存在はとてもありがたいものになるでしょう。
当記事が消費税に関する知識を身に付ける、きっかけになれば幸いです。
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