小売業界とは、生産者や卸売業者から商品を仕入れて、消費者に販売する業界です。身近なお店ではスーパーやコンビニなどが小売業界に該当します。
2020年、小売業界はどのようなビジネス形態がトレンドになるのでしょうか。基本的には2019年までと同様にテクノロジーの進化に合わせて、新しい技術を取り込みながら利益をいかに追求していくことができるのかを考える企業が多いと予測されます。
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AI予測
AIとは、計算とコンピューターの技術から知能を研究する分野のことです。
2001年、「A.I.」という人型ロボットと人間模様を描く映画が世界的に大ヒットしましたが、あれから19年経った今では、iPhoneのSiriのように、すでに映画の世界が実現されつつあります。
小売業界では、AIを使って商品の需要を、データをもとに予測するという使い方があります。これによって在庫リスクを低下させることが可能で、効率のいい小売業をおこなえるようになります。
ダイナミックプライシング
ダイナミックプライシングとは、需要と供給から商品の価格を変動させることです。
昔から、小売業界ではすでにダイナミックプライシングがおこなわれています。夕方になると、その日に売れ残ったお弁当に半額シールを貼って在庫処分するのは、まさにダイナミックプライシングです。
今は手作業によるダイナミックプライシングが主流な中、今後はモバイルやオンラインなど、その方法が増えてくると予想されます。その結果、今以上にリアルタイムな需要と供給の状況を把握して、素早く価格変動を消費者に伝えることができるようになるでしょう。
第2のキャッシュレス決済
キャッシュレス決済とは、クレジットカードや電子マネーなどの決済方法を導入することです。
日本国内では、2019年の10月1日から「キャッシュレスポイント還元事業(キャッシュレス消費者還元事業)」という政策がおこなわれましたが、2020年の6月で終了しました。
主に中小企業を中心に、キャッシュレス決済を導入した小売事業者は増えたとされていますが、キャッシュレス決済を導入するための手数料が高いことから、国が掲げているキャッシュレス決済比率40%の目標には到達していません。
この政策は2017年の未来投資戦略で設定されましたが、2025年に開催予定の大阪関西万博まで継続される予定です。
小売業界からすると、多くの決済手段が次々と登場する中、消費者が使いたいと思う手段の選定が悩ましいはずです。需要と供給とコストの三角関係に加えて、各決済手段の還元率の変化もあることから、世間的にも安定した決済手段というものがなかなか決まりません。
キャッシュレス決済を導入したいのは当然ながらも、もう少し様子を見てみたいという企業も多く、キャッシュレス業界の動向に注目しておく必要がありそうです。
顔認証システム
顔認証システムとは、人の顔で認証することができるシステムです。
技術開発は昔からおこなわれており、日本メーカーだとNECは1990年から研究開発をしています。
認証システムは「指紋認証」や「声紋認証」などさまざまなシステムがあるわけですが、顔認証はカメラを設置すれば導入可能であり、両手がふさがっていても認証できるなど、ほかにはない独自のメリットがあります。
逆にマスクをしていると認証できなかったり、個人を特定されやすいなど、技術的な課題も多いです。
今後、顔認証システムはまだまだ進化を遂げていくことになりますが、キャッシュレス手段との連携で両手を使わずに決済することがスタンダードになる日もそう遠くはないかもしれません。
無人店舗
無人店舗とは、店内に販売員を配置せずに商品やサービスを販売する形態です。
2020年時点においてはコンビニを筆頭に無人店舗をおこなっている小売事業者がちらほらある状況で、トレンドになるほど普及はしていません。
中小企業にとっては無人店舗でお店を営業したくてもできないというのが本音で、大手の小売事業者の成功がトレンドの鍵になりそうです。
日本は世界的にも安全な国なので、セキュリティ面はまだしも、お店にやってきた消費者に接客しなければ売上低下の可能性もあるわけで、これに対するリスクを懸念する事業者はまだまだ多いでしょう。
「AIに仕事を奪われる」という時代がいずれはやってくると予想されているのがいい裏付けですが、将来的に小売業界のビジネスモデルのトレンドになる可能性が高いため、関連情報は小まめにチェックしておきたいですね。
販売員のスキル向上
人件費を削減する方法は無人店舗だけではなく、AIを店内に配置することでも可能です。
この場合、販売スタッフの数は従来よりも少なくなるため、スキルの高い販売員が重宝される状況となります。
それを見越して今の段階から販売員の能力向上に力を入れておくのもいいでしょう。
社員教育はトレンドというよりも常識という表現のほうがピッタリですが、今後は人対人ではなくAIとの競争も考えていかなければなりません。
オンラインオーダー
消費者は小売業界に対して、注文から商品受取までのスピードをさらに求めるようになります。
これはスマホが普及していることが大きな理由ですが、ECサイトで注文できることが当たり前になっているため、そこからいかに早さを提供できるのかを考える必要があります。
ECサイトで完結するなら配送スピードですが、店舗の場合はオンラインで注文して店頭で受け取るという方法が効果的です。
この場合、店舗に在庫があるなら当日に商品を受け取ることができ、しかもわざわざお店に商品の有無を確認しに行く必要もないため、消費者にとっては非常に便利ですね。
RaaS
Raas(Retail as a Service)とは、ECサイトに対して、店舗とデータあるいは店舗営業を提供するサービスです。
簡単に説明すると、オンラインで商品を販売している企業に対して、その商品を実店舗で販売あるいは体験できる環境を丸ごと提供することをRaaSといいます。
アメリカの「b8ta」が有名であり、このサービスでは、オンラインで販売されている商品を店舗で試してから購入することができます。
ECサイトからすると、その店舗や環境などを月単位など期間を区切って利用することもできるため、様子を見ながら実店舗のオープンを検討できるメリットがあります。
店舗を持たないオンラインの小売事業者は、注目しておきたいビジネスです。
ほかにはないアイデア
小売業界は、商品の価格と商品の質、あるいは商品数などで集客を考えます。
その結果、経営が黒字なのであれば成功なわけですが、そこからさらに集客率を伸ばそうと思ったときに必ず何かしらのアイデアが必要です。
たとえば、コンビニの店内が水族館になっていたらどうでしょうか。消費者は商品を買うためにお店に行きますが、店内に入ると当初の目的を忘れるほどのインパクトがあり、商品を購入できた上に楽しむこともできたという大きな満足感を得られます。
とても極端な例ですが、ほかにはないアイデアを考え続けることは小売業界にとって永遠のテーマでもあり、この路線でビジネス戦略を考えることは2020年もトレンドです。
まとめ
2020年は、コロナウイルスによってすでに倒産している企業もあり、小売業界を全体で見てもトレンドを考える以前に、現状維持の経営方針で今をいかに生き残るのかを優先しなければならない状況でもあります。
東京で開催が予定されていたオリンピックも延期となり、この影響だけでも小売業界にとっては大打撃です。
2020年にこうなるであろうと予測されるビジネスのトレンドは、2021年あるいは2022年になってようやく実現されるものであるかもしれません。