ここ数年、首都圏を除く地域経済の活性化を促す『地方創生』が広く認知されるようになりました。
地方創生と聞くと、政府や自治体が行う取り組み、というイメージがあるかもしれませんが、地方経済を活性化させていくには、そこに在住する住民や企業・事業者が積極的に関わっていく必要があるでしょう。
その中で地方と首都圏の垣根を越えて、ビジネスを展開できる『D2C』が地方創生を叶える手段として大きな注目を集めています。
ただでさえ、国内の人口が減少していき、さらに顧客のニーズも多様化している現代において、顧客の支持を獲得しやすく、デジタル領域で完結するD2Cは有効な手段なのです。
当記事では、地方創生・地域活性化にスポットを当てて、地方の中小企業がD2Cに取り組むべき理由について解説していきます。D2Cの導入を検討している方はぜひ最後までご覧ください。
Contents
地方創生とは?
『地方創生』とは、各地域がそれぞれの魅力を活かして、経済活動を活性化させていき、持続可能な社会を創っていくことを指します。明確な定義はありませんが、上記に伴う施策を指す場合が多いです。
地方創生という言葉が一般的に知られるようになったのは2014年のことです。
2014年の第二次安倍内閣が掲げた『地方活性化』における政策により誕生した言葉とされており、この年に『まち・ひと・しごと創生本部』が創設されました。
さらに、翌年の2015年度から2019年度までの目標がまとめられた『第1期まち・ひと・しごと創生総合戦略』が制定され、正式に取り組みがスタートしています。
地方創生が注目を集めるようになったのは、日本という国が抱える『超高齢化社会』『人口減少』『東京一極集中』といった課題が背景にあるようです。
まず、日本では超高齢化社会が大きな問題となっています。ここ数年で出生率は下がり続けており、人口減少は避けられません。
人口が減少していくということは、働き手が少なくなることに直結しており、国力の減退が予想されます。このような人口減少は地方での進行が著しく見られ、地方経済の活性化は急務です。
また、2023年現在、東京都には日本の全人口の約3割が住んでおり、人や企業が集中しています。
もちろん、これにより首都圏の経済活動が活発的になり、生産性が高まるといったメリットもありますが、近年そのリスクが謳われるようになった、首都直下型地震や南海トラフ地震などの災害時に莫大な被害が発生する、というデメリットも存在するのです。
これらの課題を背景に地方創生が大きく注目を集められるようになりました。
なお、似たようなものに『地域活性化』がありますが、これは地方創生における政策を実施し、結果的に地域の人口が増えたり、経済が活性化したりといった結果をあらわす言葉です。
D2Cとは?
D2Cとは『Direct to Consumer』の略称で企業や事業者が企画・製造した商品をECサイトで販売し、直接顧客のもとにお届けするビジネスモデルです。
これまでは、企業・事業者が企画した商品を別の企業に製造してもらい、さらにその商品を小売店や広告代理店を通して販売するのが一般的でした。
しかし、ここ数年のインターネット利用者の増加でECサイトを通じて商品を購入する層が増えており、D2Cが飛躍的に普及しました。
D2Cにおけるメリットとしてまず挙げられるのが、収益性の高さです。
企業・事業者は商品を企画・製造し、そしてその商品を販売しますが、このとき通販サイトに自社店舗を出店する必要がなくなります。
また、卸業者や小売店への中間マージンも発生しないので、余計なコストを抑えることが可能です。
これ以外にも、顧客との距離が近くなるというメリットも挙げられるでしょう。D2Cでは、ECサイトや各種SNSを通して、顧客とやりとりを行うのが基本です。
このとき、顧客から直接意見を募るようにすれば、どのような商品・サービスが求められているかをリサーチしやすくなります。それらの意見を商品・サービスの改善に活かせば、信頼関係がどんどん深まっていき、ブランドのファン・リピーターを増やしていけるでしょう。
さらに、顧客情報の収集も容易になり、どのような年齢・性別の方が商品を購入してくれたか、サービスを利用してくれたかをチェックできます。
顧客情報を集めていけば、適切なマーケティング戦略を実施できるでしょう。
このように、D2CはEC市場の活性化と伴い、大きく発展を遂げた新しいビジネススタイルであることがわかります。
地方の中小企業がD2Cに取り組むべき理由とは?
先述したようにD2Cは自社が運営するECサイトで商品を販売し、直接顧客のもとへ商品を届けるビジネスモデルです。このD2Cの特性をうまく活用すれば、地域経済の活性化が見込めるでしょう。
ここからは地方にある中小企業がD2Cに取り組むべき理由を解説していきます。
雇用創出につながる
地方は都市部と比較して働き口が少なく、繁忙期シーズンのみ就労する労働者や派遣社員として働く方も多いです。
しかし、地方にある中小企業が積極的に地方創生を行なっていけば、地域住民の雇用機会が生まれ、結果として地域経済の活性化が促せます。
さらに、地方での働き口が増えれば、都市部への人口流出を防ぐことができるでしょう。
このように、少子高齢化による労働力不足が著しい地域にとって、雇用機会の創出はあらゆる面においてメリットを生み出します。
D2Cは地方創生につながる
人口の減少が大きな課題として挙げられている日本国内において、これまでの大量生産・大量消費のビジネスモデルは通用しなくなりつつあります。
そこで、今注目されているビジネスモデルが世の中のニーズや顧客のリアルな声を重視して、商品の企画・開発ができるD2Cです。
これまで地方の特産物を都市向けに販売する場合、卸売業者を仲介して、都市部の百貨店やショッピングモールに流通させる必要がありました。
しかし、D2Cは先述したようにデジタル領域でショッピングができるため、都市も地方も関係ありません。
実際に新型コロナウイルスの蔓延に伴う緊急事態宣言により、ECサイトで買い物をする顧客も圧倒的に増えました。
このような世の中の流れはD2C事業を行う、地方の中小企業にとって追い風になっています。
また、実店舗を介して商品を販売しなくても済むため、参入におけるハードルはかなり低いでしょう。
限られた商圏から世界に広がる
D2Cはインターネットを通したビジネスモデルだからこそ、これまでは地理的な都合により、限られた商圏でしかビジネスを展開できなかった地方の中小企業も世界を相手にアプローチできるようになりました。
2021年の時点で世界中のECサイト利用人口は20億人にも達しており、これは世界人口の約3割に相当します。
現在でも、ECサイトを利用する層は急速な増加を見せ、インターネットを使ったショッピングは当たり前の領域にすら達しているようです。
商圏が限定的だった地方の中小企業にとって、このようなポジティブな局面を活かさない手はありません。
ものづくりの企業が実力を発揮できる
D2Cの普及により、ブランドの世界観やストーリーに共感を求める顧客が増えています。
これに伴い、つくり手(生産者)の存在感が大きくなっており、ものづくり企業が実力を発揮しやすい環境になりました。
これまでのビジネスモデルは広告・集客に注力し、知名度の向上を図るものがほとんどで生産者はあくまで裏方の位置付けでした。
しかし、商品の企画・開発によって生まれたストーリーやブランドのバックグラウンドが重要視されるようになり、ものづくりを行う職人の顔や仕事に対する想いが顧客に届きやすい状況になっています。このとき、つくり手が確かな技術と知見を持ち合わせており、信頼できる要素があれば、ファン化・リピーター化も促せるでしょう。
地方にある中小企業の中には、長年に渡りものづくりを支えてきた企業がたくさんあります。
このような企業が本来の実力を発揮するうえでD2Cは非常に有効なビジネスモデルと言えるでしょう。
その地域にしかないものはSNSと相性が良い
大前提として、あらゆるマーケティングにおいて『機能的価値』と『情緒的価値』は外せないポイントです。
機能的価値とは再現性の高いものに生まれる傾向があり、ファーストフード店に代表されるような『早い』『安い』『美味しい』という価値を持った商品がこれに該当します。
一方で情緒的価値はその商品から受けるイメージに対して生まれる価値です。
例を挙げると、デザインや素材などを重視して製造されるものがこれに分類されます。
名前が知られている大企業の多くは機能的価値が高い商品を大量生産しますが、地方の中小企業は難しいのが実情です。
一見、大きなハンデを背負っているようにも見えますが、その地域にしかない情緒的価値の高いものを販売する場合、D2Cは最適と言えます。
というのも、情緒的価値が高い商品はSNSに投稿してもらえる傾向が強く、これがD2Cの特性に合致しているのです。
通常、全国規模の宣伝に大きな費用をかけられない地方の中小企業は知名度の面で大きな課題を抱えていました。
しかし、そこからしか購入できない商品はSNSを通して、知名度を大幅に上げることができ、D2Cと相性が抜群なのです。
地方中小企業によるD2C事例
それでは次に地方の中小企業によるD2Cの成功事例を見ていきましょう。各企業の取り組みをチェックして、戦略の一案として検討してみてください。
Hasami Life
公式サイト Hasami Life
長崎県東彼杵郡波佐見町で陶磁器製品元卸販売・加工業などを行う『Hasami Life』は『地域と消費者をダイレクトに繋げる』という企業理念のもと、メディア型のECサイトを活用して、波佐見町の伝統工芸品『波佐見焼』の魅力を発信しています。
同社のサイトでは、波佐見焼の製造工程だけでなく、盛り付ける料理のレシピやテーブルコーディネート、取材記事やコラム記事など、波佐見焼の魅力を触れられるコンテンツを多数公開。
また、これとは別に波佐見町の農作物や地酒、観光スポットや移住者へのインタビューなどの、波佐見町を訪れたくなるような情報も掲載しています。
タマチャンショップ
公式サイト タマチャンショップ
『ニッポンのおかあちゃんになりたい!』という理念のもと、さまざまな『しあわせ食』を販売する自然食品ブランド『タマチャンショップ』。
『タマチャン』というショップ名は店長の母親の実名から取られており、ネーミングからもこだわりが感じられます。
元々は宮崎県都城市で椎茸農家でしたが、テレビ番組での紹介を機に知名度が大幅に向上しました。
ショップ運営に大きなクレームが寄せられたこともありましたが、その際の丁寧な対応により、顧客からの信頼を獲得。
楽天のショップオブザイヤー食品ジャンル賞を2年連続で獲得するまでに急成長しました。
現在は地元である宮崎県都城市、福岡県や鹿児島県、大阪府に実店舗もオープンさせており、地方初のECショップとして大きな成功を収めています。
中小企業がD2Cで成功させるためには?
ここまで、ご紹介してきた通りD2C市場は国内で急速な成長を見せていますが、すべての企業・事業者が必ず成功するというわけではありません。
プランもなしに闇雲に導入しただけでは、失敗する可能性が高いでしょう。
ただし、D2Cで大きな成功を収めた企業には、いくつかの共通点があります。ここからは中小企業がD2Cで成功するために必要な3つの要素を見ていきましょう。
商品力の高さ
まず、D2Cを成功させるためには、商品の価値が高いことが挙げられます。
大前提として、巷にある様々な商品と差別化ができていないと、誰も自社商品に興味を持ってもらえません。
何かひとつ『うちの商品は他の商品と個々が違う』というセールスポイントが必要になります。
例えば、アパレルブランド『COHINA』は低身長の女性をターゲットにしており『自分にあったサイズの服がなかなかない…』という顧客のニーズに応えているのです。
また、InstagramといったSNSのLIVE配信機能を使って、顧客と積極的にコミュニケーションをとっています。さらに『Basefood』は近年話題になっている『完全栄養食』を販売する食品ブランドです。世の中のトレンドを取り込み、知名度を上げる手法はD2Cが持つ特性と合致しています。
ブランディング
D2Cにおいて、最も重要とされるポイントがブランドイメージの確立です。
D2Cは自社で運営するECサイトで商品を販売するため、Amazonや楽天市場などのモール型のECサイトと異なり、集客は期待できません。
そこで、自社のブランドを理解してもらうためにも、SNSやWEBサイトを使って、ブランドオリジナルのストーリー・哲学を積極的にアピールしていきましょう。
このとき、他のブランドと異なる独自の世界観を確立できていれば、差別化が容易になります。
また、ブランドのストーリーに共感してもらえれば、知名度の向上だけではなく、ファン化を強く促すことが可能です。
『運営するブランドが顧客に対してどのような価値を提供できるか』『どのようなストーリーに共感してもらいたいのか』
この2つのポイントを意識して、顧客を惹きつけられるようにしてみてください。
マーケティング力
そして、最後に重要なポイントとなるのが、マーケティングノウハウです。
どのようなアプローチで顧客を獲得していくのか、しっかりとマーケティング戦略を立てておかなければ、思っていたほどの売り上げは見込めないでしょう。
D2Cにおけるマーケティングといえば、SNSマーケティングがその際たる例です。
今やたくさんの企業がマーケティング戦略の一環としてSNSを活用していますが、D2Cブランドは顧客と近い距離でやりとりを行うビジネスモデルなので、SNSを使わない手はありません。
なお、SNSは商品の知名度を上げられるだけでなく、アンケート機能を使ったニーズの調査にも効果的です。
また、自社商品をSNSで紹介してもらった方向けにプレゼントを送るキャンペーンを実施したり、商品の利用方法を動画で紹介したりすれば、一般的なファンとは違った、コアなファンを増やすことができます。
まとめ:地方の中小企業がD2Cに取り組むべき理由~地方創生・地域活性にD2C~
日本は少子高齢化や東京一極集中、地域経済の縮小など、さまざまな課題を抱えています。
これらの課題を解消するためにも、地方の経済を活性化させ、人口流出に歯止めをかけなければなりません。
そこでキーとなるのが、D2Cビジネスの登場と地方にある中小企業の取り組みです。
D2Cを導入すれば、これまでスポットライトが浴びる機会が少なかった中小企業は大きな勝機を見出すことができ、さらに地域経済の発展が見込めるでしょう。
もちろん、D2Cビジネスを成功へと導くには相応のマーケティング戦略とオリジナリティが感じられる商品・サービスが必要になりますが、インターネットを通したアプローチもぜひ検討してみてください。
当記事がこれからD2Cの導入を考えられているみなさまの参考になれば幸いです。
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