EC(electronic commerce)サイトは、インターネット上で自社の商品やサービスを販売するサイトです。
ECサイトの構築方式は、市販のECパッケージを使って構築する、オープンソースのECパッケージを使って構築する、ASP(Application Service Provider)のサービスを利用する、フルスクラッチで1から構築するの4種類があります。
それぞれメリット・デメリットがありますが、この記事ではフルスクラッチで構築する場合のメリット・デメリットについて説明します。
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フルスクラッチはもう古い?主流はパッケージやASP
2019年現在、ECサイトを1から作成するフルスクラッチで構築するのは、かなり少なくなっており、多くの企業がECパッケージをカスタマイズしたり、ASPを利用したりする方式で構築しています。
これは費用対効果の問題で、フルスクラッチで作成するよりパッケージやASPを利用した方が、コストが安く、開発も早く進むからです。
しかし、ユニクロやZOZOTOWNなど日本を代表するメーカーがフルスクラッチを選択している例もあります。どういう種類のECサイトがフルスクラッチを必要とするのでしょうか?
フルスクラッチを採用するメリット
フルスクラッチの開発は、既存のプログラムを一切使わずに1からシステムを構築します。そのため、他の方式に比べて、最も自由度が高く、費用を考えなければ全ての要望を実現することができます。
したがって、特殊な販売形態のECサイトを作らなければならない企業はこの方式を採用せざるを得ません。
また、自社で開発可能な場合、ハードからソフトまで全ての開発・運用管理を内製化できます。実はフルスクラッチでもっとも大きなメリットはこの内製化にあります。
「開発費用をかけて、なおかつ自社内に開発・運用管理要員を置くのはコストがかかりすぎるのでは?」と疑問に思う人もいるでしょう。商品を販売するのが目的なのに、開発リソースまで自社に抱えるのは過剰投資に見えるからです。
しかし、ECサイトで得られる消費者の行動データを分析して、コンバージョンレート(サイト訪問客の内、実際に購入した人の割合)を上げるために「高速PDCA」を実行するには内製化が必要なのです。
「高速PDCA」は、データ分析から売上向上に役立つと思われるサイトの改善案を企画(Plan)し、実際に適用(Do)して結果を検証(Check)し、さらに改善(Action)する。このPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを高速に回すことで、どんどん利用者が買い物しやすいようにサイトを作り替えて売上を伸ばす手法です。
これを実践するには分析、企画、開発・運用管理を行なう人間が全て社内にいなければ高速化できません。
システム開発を外部委託していると意思疎通に時間がかかる上、システムの改修にも時間がかかります。
パッケージでは仮説を検証するための機能が実装できない可能性があります。
したがって、システムに関わるリソース(ハード、ソフト、人材)を全て社内に持っている必要があり、実際にフルスクラッチしている企業として例に挙げたZOZOTOWNは、ZOZOの100%出資した子会社であるZOZOテクノロジーがこのPDCAの実行部隊になっています。
フルスクラッチを採用するデメリット
フルスクラッチを採用するデメリットは、1から作り上げるため、パッケージやASPを利用して作るより費用が高く、開発期間が長くなることです。
またサーバなどのハード購入費用と設置場所、システム開発・運用管理の人員が必要となります。
そして、システムを更新した際の、開発・運用ドキュメントなどのシステム資料への反映が遅れがち(最悪最新版にならない)になることです。
特に費用や開発期間の面から考えた場合、前述した特殊な販売形態をしていたり、ECサイトの「高速PDCA」を実践する予定がなかったりする場合は、フルスクラッチはほとんどメリットがありません。
競争の激しいネットビジネスの世界では何よりもスピードが求められるので、よほど大規模なECサイトを作って市場のシェアの大半を奪うような構想がない限り、フルスクラッチを選択するのは間違いである可能性が高いです。
フルスクラッチを選択するECサイトは内製化によるメリットを活かせるサイト!
4種類ある構築方式の中からフルスクラッチを選択するECサイトは、ZOZOTOWNのように内製化によるメリットを活かせる大規模ECサイトでしょう。
中小のネットショップや一般的な企業の通販サイトなどはパッケージやASPを利用した方が、間違いが少なくなります。
しかし、ECサイトの分析データを活かした「高速PDCA」による売上の最大化を目指すのであれば、フルスクラッチ+内製化でチャレンジすべきです。